ダイアモンド・ガス・オペレーション株式会社


エネルギーと環境

環境最前線

はじめに

 46億年前に誕生した地球は、青い海と緑の大地そして大気を備え、生命が存在しています。しかし今、今世紀最大の環境問題とも言われている地球温暖化が進んでいます。地球温暖化とは、地球表面の大気や海洋の平均温度が長期的に見て上昇する現象で、生態系の変化や海水面の上昇による海岸線の浸食等の問題もあります。こうした中で、温暖化が将来の人類や環境へ与える悪影響を考慮して色々な対策が講じられ、実行に移され始めています。
 本稿では、現在地球上でどのような被害が齎されているのか、そして各国の政府機関/企業が進めている活動について、2006年12月13日の弊誌800号発行記念及び環境特集号として掲載致しました、三菱商事地球環境事業部の慶田一郎氏による寄稿論文「地球温暖化と排出権ビジネス~『地球と企業』の未来~」を通じてご紹介致します。

人類が初めて直面する気温変動の影響

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2001年に取りまとめた第三次評価報告書によると、地球上の平均気温は1861年以降上昇しており、20世紀中に世界平均で0.6±0.2℃上昇した。今後何も対策を施さなかった場合、1990年から2100年までの間に、気温は1.4~5.8℃※上昇すると予測されている。このような急激な気温の上昇は過去1万年の間に無く、人類がかつて経験したことのない気温変動となる。
 温暖化は、海面の上昇、異常気象の増加などの気候変動を引き起こし、自然・人間社会にさまざまな影響を及ぼす。これらの影響の程度は、地理的条件によって偏りがあり、砂漠の多い地域や海抜の低い地域などでは特に影響が大きい。南太平洋の環礁国ツバルは、将来国土が水没してしまう危険性が高い。すでに海水の浸入によって人間の居住が脅かされており、ニュージーランドへの移住が始まっている。日本でも、イロハカエデの紅葉日が過去50年の間に約2週間遅くなるなど、自然への影響が観測され始めている。さらに、今後温暖化の進行により、海面が65cm上昇した場合、砂浜海岸の八割以上が消失することや、真夏日の倍増、食糧自給率が低いために食料生産国の気候変化による食料の生産変動の影響を大きく受けることなどが予測されている。

 予測できる影響以外に、気候の安定化と深いかかわりのある海洋の循環の停止やグリーンランドの氷の大規模な崩壊、シベリアの永久凍土に封じ込められているメタンの大量放出など、人間や自然の適応能力を超えた破局的かつ不可逆な事態が発生する可能性も指摘されている。
 ※IPCCは、今後の経済・社会の条件が異なる主に4つのシナリオを想定し、気温上昇を予測した。気温上昇の予測値の幅は、シナリオの違いによるもので、不確実性が大きいわけではない。

地球温暖化の自然と人間への影響予測

温室効果と温暖化のメカニズム

温室効果と温暖化のメカニズム

 太陽からのエネルギーが地表面に達して海や陸を暖め[1]、暖められた地表面から熱(赤外線)が放射される[2]。二酸化炭素(CO2)に代表される『温室効果ガス』はこの熱を吸収、熱の一部を再び地表面に放射して、地表を暖める[3]。これが『温室効果』である。
 地球の平均気温は約15℃と、人間をはじめ生物が暮らしやすい状態に保たれている。仮に温室効果ガスが全く無かった場合、地球の気温はマイナス18℃になると考えられており、温室効果ガスが地球の気温維持にいかに重要な役割を果たしているかが分かるだろう。

 地球温暖化は、大気中の温室効果ガスが増加したことで温室効果が強くなり、気温が上昇する現象。温室効果ガス増加の原因は、化石燃料の大量使用や森林伐採などの人間活動だとされている。CO2は人間活動だけでなく自然界からも排出され、その多くは森林や海洋に吸収・貯蔵、その一部はまた大気中に放出されて循環し、大気中の濃度は一定に保たれていた。それが産業革命以降、排出されるCO2が急激に増加。大気中のCO2濃度は、産業革命以前は約280ppm※(0.028%)で安定していたが、産業革命以降増え続け、現在は約380ppmと、三割以上増加している。
※ppm:百万分の一を示す

温室効果ガスとは

 温室効果ガスは主に4種類。二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンである(下表参照)。ガスによって温室効果をもたらす強さは異なり、メタンはCO2の21倍以上、フロン類は最大二万倍以上と、少量でも温暖化への影響は強い。ただ、IPCCによると、産業革命以来の温暖化への影響度は、CO2が60%を占め、最も大きい。現在の排出量を見ても、日本では下表6種のガスのうち、CO2が全体の94.2%を占めるほど、圧倒的に排出量が多くなっている。

  • 温室効果ガス(京都議定書対照の6種のガス)
  • 拡散する温室効果ガス
  • 大気中のCO2濃度の変化

地球規模での対策が必要

 地表付近では偏西風や貿易風として現れているように、地球の大気は循環している。温室効果ガスは、大気の循環により対流圏で短期間に地球規模に拡散、平均化する(左下図参照)。つまり、地球上のどこで温室効果ガスを排出しても、地球全体に影響が及ぶのである。上のグラフは、ハワイ、日本、南極点におけるCO2濃度の変化を示しているが、どの地点においても同じようにCO2濃度が上昇しているのが分かる。
 一方、削減する視点から考えた場合、地球上のどこで削減しても地球に与える影響は同じということになる。他国での排出量削減分を自国の排出量から差し引くことができる京都メカニズムは、地球全体として排出量を減らすために合理的な仕組みだといえるだろう。
 大気汚染など硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)が原因となる公害問題は、その被害が発生地か発生地付近の地域に及ぶものであり、その地域で対策を講じることで対応が可能である。一方、地球温暖化は、温室効果ガス排出地だけに影響が出るわけではなく、全地球に影響が及ぶグローバルな環境問題である。また、その影響が確認されるには数十年から百年の時間軸が必要であり、現代の人間活動の基盤となっているエネルギー消費と深くかかわるスケールの大きい問題であるため、一国の努力のみで解決できるものではなく、国や地域を超えた国際的な取り組みが求められる。

地球温暖化防止の取り組み~京都議定書~

 地球温暖化防止に関する初めての国際的な取り組みが『気候変動枠組条約』である。温室効果ガス濃度を安全な水準で安定化させることを「究極の目的」とし、温暖化防止に向けた世界基準の枠組みを定めた。そのうちの重要な概念の一つが、「共通だが差異のある責任」である。これは、温暖化の責任は世界共通だが、これまでの温室効果ガスの多くが先進国から排出されてきたことから、先進国が主要な責任を負うべきという考え方。これらの条約の枠組みを基にして、先進国に温室効果ガスの削減についての数値目標を定めるなど、より具体的な対策を定めたのが『京都議定書』である。

  • 京都議定書
  • CO2の国別排出量
  • ホットエア
  • 京都議定書における先進国の数値目標

数値目標達成でも排出量は増加

 京都議定書は地球温暖化解決に向けた重要な一歩であることは間違いないが、京都議定書のみで温暖化が防止できるわけではない。京都議定書の削減目標が達成された場合、先進国(米国・豪州を除く)全体で1990年比約5%の温室効果ガスが削減されるものの、数値目標を課されていない国々の排出量が増加するため、地球全体ではおよそ30%以上増えるとの予測もある。
 また、最大の排出国である米国と、豪州が京都議定書から離脱してしまったことで実効性が低くなってしまったほかにも、ロシア、ウクライナなどの持つホットエアが安価に先進国に出回った場合、自国で排出削減の努力をすることなく数値目標が達成されてしまい、実質的に排出量が削減されないという懸念もある。各国が「共通だが差異のある責任」を果たし、温室効果ガスの削減努力を行うことが求められる。
 京都議定書の約束期間は2008年から2012年までだが、それ以降も温暖化防止のための国際的な取り組みが継続していくことは間違いない。米国や途上国を含めた温室効果ガス削減の取り組みが必要であろう。

京都議定書下でのCO2排出量の目標予想

京都メカニズム

 京都メカニズムは、市場を活用し、他国で得られた排出削減分を自国の目標達成に利用できる制度。京都議定書の数値目標を達成するための、自国内での排出削減を補う仕組みとして導入された。具体的には「クリーン開発メカニズム(CDM)」、「共同実施(JI)」、「排出権取引(ET)」の三つの仕組みがある。
 日本など、省エネが進んでおり、新たに排出削減するためのコストが高い国にとっては、削減コストが低い国で、より費用対効果的に削減することが可能となり、世界全体として経済効率的に削減が進められる。また、先進国のエネルギー・環境技術や資金がホスト国(途上国やロシア、ウクライナ、中・東欧諸国など)に移転されることにより、ホスト国は排出権の売却益や先進技術へのアクセスを獲得、地域の経済・社会・環境的課題の解消の一助となることで、持続可能な開発にも貢献する。さらに、排出権ビジネスの枠内だけであるにせよ、数値目標の無い途上国などで削減を行うことで、先進国だけでなく世界全体をカバーした排出量の削減が可能となっている。そして、企業にとっては、排出削減への寄与という新しいビジネスチャンスが生まれたことになる。

  • 排出権の取引のイメージ
  • クリーン開発メカニズム CDM:Clean Development Mechanism

日本の現状と企業の取り組み

 日本は京都議定書において、1990年比マイナス6%の温室効果ガス削減を課せられている。しかし、2004年までの間にも排出量は増えており、特に運輸、業務(オフィス・店舗)、家庭部門の排出量増加が顕著で、1990年比で7.4%排出量は増加。目標達成のためには計13%以上削減しなければならなくなっている(グラフ参照)。
 日本政府は、『京都議定書目標達成計画』(2005年4月)を定め、国内で省エネルギーなどの技術革新を促進しつつ、植林などの森林吸収源でマイナス3.9%を確保、国内対策で届かなかった分(1.6%程度と見込む)を政府責任で京都メカニズムにより調達するとしている。これに付随する施策として、多量の温室効果ガスを排出する企業・団体に対し、排出量の報告を義務づける地球温暖化対策推進法の改正や、省エネルギー法の改正が、2006年4月に施行されることになった。
 一方、産業界でも、経団連の『環境自主行動計画』(2010年時点でCO2排出量を1990年レベル以下に抑えるよう努める)などの自主的な取り組みを打ち出している。ただ、それでも日本の目標達成は危ういと考えられており、2007年の『京都議定書目標達成計画』見直しでは、企業に対する規制が厳しくなる可能性が高く、電力、エネルギーなど排出量の多い企業や商社を中心に京都メカニズムのプロジェクトによる排出権獲得が始まっている。

  • 京都議定書目標達成計画
  • 日本の温室効果ガスの排出抑制・吸収量の目標
  • JI・CDM日本政府承認案件(平成18年11月2日現在合計) その1
  • JI・CDM日本政府承認案件(平成18年11月2日現在合計) その2
  • JI・CDM日本政府承認案件(平成18年11月2日現在合計) その3
  • 三菱商事の取り組み

山東東岳化工フロン処理CDM事業

 中国最大のフロンメーカー、山東東岳化工を事業主体として、エアコンや冷蔵庫に使う冷媒フロンの製造過程で発生し、大気中に放出されている副生ガス(HFC23)を回収・熱分解処理するプロジェクト。新日本製鉄が分解処理設備のエンジニアリングと主要機器の供給を担当、三菱商事はCDM事業全体を支援します。設備は2007年前半に稼働予定で、処理によって得られる排出権はCO2換算で年1,011万トン、総計約5,500万トンと、単一プロジェクトの排出権取得量としては世界最大。同事業は、本年3月13日付けで国連CDM理事会より正式承認されています。

画像:CDMプロジェクト

チリ小規模水力発電所CDM事業

 チリの民間電力会社HGV(Hidroelectrica GuardiaVieja)社が、世界銀行炭素基金の支援により実施する水力発電プロジェクト。既存の化石燃料(主に天然ガス)による発電から、ダム建設を伴わない流れ込み式の小規模水力発電所(容量:25MW)に切り替え、CO2は年間約14万トン削減されます。現在、国連にCDM事業登録を申請中です。
 三菱商事は、このプロジェクトで創出される排出権CO2換算10万トンを2003年から2012年の間購入します。

写真:風景



(2007年5月更新)