ダイアモンド・ガス・オペレーション株式会社


エネルギーと環境

エネルギーとは

1. エネルギーとは

 エネルギーは国民生活、経済活動にとって重要な基礎物資であり、経済成長とエネルギー需要は密接に結びついています。エネルギーには、石油、ガス、石炭以外にも水力/原子力/風力/地熱/太陽熱/薪/ゴミ発電に至るまで多くの種類が存在します。
 一般に経済用語として登場するエネルギーは、商業的に利用可能で、且つ統計上把握可能なものという範囲で捉えられており、中でも特に、加工されず自然界から得られた形のままで提供されるエネルギーは一次エネルギー、それを加工して得られるエネルギーを二次エネルギーとして統計上区別しています。
 一方、ガスにも多くの種類があり、油田から原油と一緒に産出される随伴ガス及びガス田から生産される天然ガスは一次エネルギーですが、製油所の精製プロセスを経て生産されるプロパンガス、ブタンガスは二次エネルギーです。また、同じ天然ガスでも都市ガス用に加工された後のガスは二次エネルギーに分類されます。尚、近年注目を浴びている深海海底や永久凍土層下にあるメタンハイドレードのような新エネルギーも一次エネルギーに分類されます。
 戦前から戦後まで、長い期間をかけて国産の石炭が日本のエネルギーを支える柱でありましたが資源の枯渇、コスト高もあり1960年代の高度経済成長期では石油がこれに取って代わりました。その石油も1973年の第四次中東戦争に始まる第一次石油危機と1979年イラン革命前後の第二次石油危機での痛手から、エネルギー構造の見直しが図られその比率は年々低下してきています。第二次石油危機当時には一次エネルギーに占める石油の割合は70%を超えていましたが、現在は50%弱となっています。将来的にも石油の経済性、利便性等から主要なエネルギーであり続けることは変わりませんが、環境保全等の観点から天然ガスの構成は拡大すると予測されています。

図:一次エネルギー供給構成予測

2. 天然ガスとLNG

 天然ガスは、メタンを主成分とする燃料で、硫黄分を含まず、また、単位発熱量当たりの二酸化炭素(CO2)発生量が石炭の60%弱、窒素酸化物(NOx)は同20%と、非常にクリーンなエネルギーです。図:主要エネルギーの可採年数
 資源の採掘可能埋蔵量から現在の生産量を除して得られる可採年数は石油の41年に対して、天然ガスは65年で、その豊富な埋蔵量が確認されています。欧米諸国では、早くから発達した大容量、長距離の天然ガスパイプライン網を通じて生産地から消費地に天然ガスが陸上輸送されています。一方、日本、韓国、台湾では、地理的な条件、インフラ等の制約から、天然ガスは液化天然ガス(LNG)として、船による海上輸送が行われています。
 BP統計によると2006年世界の天然ガス消費量は2兆8508億m3(LNG換算で約20億トン)で、内、約4分の1が貿易によって国外から調達されたものです。貿易数量の内、約4分の3に当る5371億m3はパイプラインを通じて、残る4分の1である2111億m3は、LNGの形で取引されました。

図:世界の天然ガス消費量に占める貿易量の割合

3. LNGはどうやってできるの?

 ガスを液体にするには二つの方法があります。一つは、圧力を加えて液化する方法、もう一つは、沸点以下まで冷却する方法です。図:分子配列
 LPGの主成分であるプロパンは、常温(20℃)で約0.8MPa(≒8kgf/cm2)、ブタンは、約0.2MPa(≒2kgf/cm2)の圧力をかけると簡単に液化します。但し、世の中、やっかいなガスもあります。メタンは、常温どころかマイナス82.6℃以上だと、どんなに圧力を加えても液化しません。一方、常圧(1気圧)の状態でも、プロパンは、マイナス42℃、ブタンは、マイナス0.5℃以下に冷やすと簡単に液化しますが、メタンは、マイナス162℃以下に冷やさないと液化しません。

図:いろいろなガスの蒸気圧曲線

 現在、世界13カ国から天然ガスがLNGとして輸出されています。生産国で地下から産出した天然ガスは、液化プロセスで不要となる炭酸ガス、硫化水素、水、水銀、沸点の高い炭化水素等の不純物を除去された後、天然ガス液化プラントへと送られ、その液化サイクルを経て液化されます。
 液化プラントでの冷却の仕組みは、冷蔵庫、エアコンと同じ原理が用いられます。冷媒を介して、コンプレッサー(圧縮器)による冷媒の加圧→コンデンサー(凝縮器)による高温冷媒の冷却と凝縮液化→エバポレーター(蒸発器)で高圧の冷媒を一気にフラッシュ・気化→システム及び通過する原料天然ガスの冷却を行う仕組みです。

図:液化設備(カスケード方式)

 天然ガス液化プラントでは、主として、プロパン、エチレン、メタンがそれぞれの系で冷媒を務めます。冷媒毎に冷凍サイクルを独立させて冷却する方式(多元冷媒カスケード方式)、最初から冷媒を混合(他に窒素も利用します)し、一つに統合された冷凍サイクルの中で冷却する方式(混合冷媒方式)、更に、冷媒のプロパンを最初に予冷して液化効率を高める方式等があります。但し、原理は皆略同じです。

4. 天然ガスはどのように運ぶの?

 現在世界中には200隻以上のLNG船が就航しています。天然ガスは、液化施設でマイナス162℃に冷却され、体積が約600分の1に凝縮されます。これによって陸上での貯蔵、海上での輸送が容積面で容易となります。超低温で凝縮されたLNGを輸送するために、特殊な構造を持つLNG船が必要となります。
 LNG船はLNGをマイナス162℃の沸点に保ったまま、生産地から消費地へと運びます。LNG船のカーゴ・タンクは防熱構造になっていますが、外部からの侵入熱で、一部のLNGが蒸発します。LNG船のタンクは構造上、内圧に耐えることが難しいことから蒸発した天然ガス(BOG:ボイルオフガス)は、タンクから取り出され、LNG船の推進用燃料の一部として使われます。その結果、タンク内の圧力は一定に保たれ、LNGの温度は上がりません。図:タンカー
 海上輸送されてきたLNGは、消費地に到着後、受入基地の施設を通じて、一旦LNGのまま貯蔵タンクに蓄えられ、火力発電所の原料として、また都市ガス用としてガス化し、払い出されます。
 LNGをガスの状態に戻すには、受入基地の気化器を用いて過熱、気化します。気化器にはいくつか種類がありますが、LNGの受入れ基地は海に面しているので、海水を使ったオープンラック型気化器(ORV)が一般的です。ORVは、パネル状に立てて配列した長さ4~6mの高さの管を並べたパネルを多数組み合わせ、管の外側から海水を流下させ管内を下から上に流れる超低温のLNGと海水で直接熱交換させてガス化する方式です。他に、緊急時や、ピークシェービング用にランニングコストは高めなものの、起動と停止が容易なサブマージド型気化器(SMV)があります。

5. LNGの価格って、どうやって決めるの?

 天然ガス及びLNGの価格は、一般に熱量を単位として計算されます。熱量の単位にはカロリー(Cal)、ブリティッシュ・サーマル・ユニット(BTU)、サーム(Therm)、ジュール(Joule)等いろいろありますが、国際的なLNG取引ではBTU(ブリティッシュ・サーマルユニット:質量1ポンドの純水を、標準気圧のもとで華氏1度だけ温度を高めるために要する熱量)が使用されています。
 日本のLNG価格は、1970年代の固定価格制の時代、1980年代の原油GSP(政府販売価格)とリンクした時代を経て、現在では、全日本輸入原油の加重平均入着(CIF)価格(JCC:Japan Crude Oil Cocktail)とリンクした公式が用いられています。原油価格を指標としているのは、天然ガスに対して特に火力発電用の燃料として競合する生焚用原油(原油専焼)との経済性比較があったためです。
 一方、欧米では、天然ガスの取引が主としてパイプラインで行われていることから、パイプラインガスとの経済性比較、暖房用燃料である重油、軽油といった競合燃料との経済性比較を前提とした価格公式が用いられています。
 近年、ヨーロッパ、米国向けを中心とするLNGのスポット取引(市場間の価格格差を利用した裁定取引や、季節間スワップ等の短期取引)が増加し、米国のニューヨーク商品取引所(NYMEX)で取引される天然ガス先物(ヘンリーハブ)価格及び、英国ロンドン国際石油取引所(IPE)の先物価格を価格指標として用いる例も増えています。

図:2006年の天然ガス・LNG価格推移

6. 世界のLNG貿易の流れ

 1959年、メタンパイオニア号が積んだ初めてのLNGが米国ルイジアナのレイクチャールズ基地を出航し、大西洋の彼方、英国キャンベイ島への処女航海を行いました。この実験船成功を契機に本格的なLNGの歴史が始まりました。日本では、これに遅れること10年、アラスカからの最初のLNG船ポーラ・アラスカ号が東京ガスの根岸基地に入港しました。その後、天然ガスの需要は急速に成長し、その資源を海外に頼らざるを得ない日本は、必然的に世界最大のLNG輸入国となりました。

図:LNG国別輸出入数量

 LNGプロジェクトは、天然ガスの探鉱開発から、それを液化、出荷する輸出基地建設までの上流プロジェクト、LNG船の建造と輸送を行う中流プロジェクト、更に受入基地建設から発電所、或いは都市ガス網に至る下流プロジェクトに大きく分かれています。これら一連のセクターを総称してLNGチェーンと呼んでいますが、各セクターが巨額の資金を必要としていること、また、プロジェクトは一定規模の買主のコミットメントを前提に着手されることから、各セクター間の相互信頼の上に成り立つ非常に緊密なパートナー関係となっています。図:取引方法
 従来、日本及び韓国、台湾の三国を合わせたLNGの輸入数量は、世界全体の4分の3以上をしめ、日本だけも世界の半分以上を輸入してきました。近年になり、米国での発電用需要の急増や、北海ガス田枯渇を背景とした英国のガス需要増加、EU加盟諸国で急速に進む規制緩和等もあり、世界全体のLNG需要で欧米の占める比率が拡大しています。また、アジアでは中国、インドといった新興のLNG輸入国が出現した他、新たにLNG導入を計画する国々もあります。したがって、その占める比率は小さくなるものの、既存LNG輸入諸国の需要も堅調なことから今後世界のLNG需要は急速に拡大していくものと予想されます。
 LNGの供給サイドでは、昨年までLNG輸出量の第1位を占めていたインドネシアの輸出不振の一方で、2位のマレーシアも一挙に抜いてカタールが最大のLNG輸出国に台頭しました。世界的なエネルギー価格の高騰を受け、比較的低廉な天然ガスへのエネルギーシフトが進み、これもLNG需要急増へとつながり、LNGの供給が一時的にタイト化する一方、LNG貿易はグローバル化の様相を呈しています。既存の長期契約の枠を超え、カタール、エジプトといった生産余剰能力を持つ売主との短期取引、スポット取引も増加しました。また、日本をはじめとするアジアの伝統的なLNG輸入国間では、それぞれの国の季節需要パターンの違いを利用した相互融通(スワップ)取引も行われています。また、上流から下流まで全てのバリューチェーンに絡む欧米企業の中には、ヨーロッパと北米間の市場価格差を利用した裁定取引や地理的制約を補う地域間スワップが行われています。

7. 日本のLNG業界

 2006年度(2006年4月~2007年3月)、日本のLNG輸入数量は通関ベースで6,300万トンを越え、前年比10%近い高い伸びを記録しました。全体量の約70%を電力業界が、残り約30%を都市ガス業界・その他が占めています。
 日本の一次エネルギー供給の約14%を占める天然ガスは、その略全量を輸入に依存していますが、石油と異なり、中東以外にも広く分散して賦存し、また、長期契約を主体とし、安定的に確保できること、また環境保全でも優れたエネルギーとして、国もその導入促進に積極的な姿勢を示しています。
 国内のLNG受入基地は買主である電力会社、都市ガス会社、製鉄会社が独自に或いは共同形態で所有しています。これまで、受入基地は需要地である大都市に分散して建設されたため、欧米で発達したような各地域間を結ぶ広域パイプライン・ネットワークの発達は遅れました。
 2007年3月に閣議決定されたエネルギー基本計画でも、国内のガス供給インフラ整備及び広域的なガス流通の活性化の観点から、パイプラインへの投資インセンティブの付与や、相互連結、第三者利用の促進がうたわれています。
 日本では、1995年より電力/ガスの規制緩和が段階的に実施されてきました。こうした中で電力、ガス事業者、石油会社をはじめとする異業種間、或いは地域を越えた業者間の競争が激化し、天然ガスの輸送方法も従来のパイプラインから、ローリー/貨車コンテナ/内航船など多様化が進んでいます。地方都市においても、小型の国内専用LNG受入基地、サテライト基地が建設されています。
 一方、海外にも眼を向け、日本の買主が自らLNG上流資源に積極的に参画する動きが見らます。上流プロジェクトに参画することで、資源を自らの手中に確保できるのは勿論のこと、万一の事態に際して、素早い対応策を採ることができます。また、かつては主に日本の海運会社によって出資・建造されていたLNG船も、買主が独自に建造・所有する例も増えてきています。これも規制緩和による日本のガス需要の先行き見通しや自社の市場シェアに不確実性が高まっていること、同時にLNG調達の経済性と柔軟性を更にアップしていこうとの思惑によるものです。

8. 主要国際会議

 天然ガス/LNG業界において、ガス生産から利用に至る全分野に亘る研究、関係者の交流促進といった情報交換の場として、世界各地で国際会議が年に数回開催されています。毎年開催されるものもあれば、2-3年に1度の周期で行うものあります。著名人が講演者として参加する比較的大きな会議としては、世界ガス会議(WGC、2003年に東京で開催)、国際LNG会議(LNG15と称されたりする)、ガステック(GASTECH)、世界エネルギー会議(WEC)などがあります。普段ではなかなかお会い出来ない方々と面識を持つ機会でもありますので、ご関心があれば是非参加されることをお勧めします。

(2007年5月更新)